絵の具の混色の基本ルール|濁らせない色づくりの理由とコツを押さえる

絵の具の混色の基本ルール

絵の具を混ぜるときに、思ったより暗く濁ってしまって「混色の基本がわからない」と感じている人はとても多いです。

せっかくきれいな色を選んだのに、混ぜた瞬間にグレーっぽくなってがっかりすることもありますよね。

実は絵の具が濁る理由にはきちんとした仕組みがあり、それを押さえておくと「どこまで混ぜても大丈夫か」「どの組み合わせは危険か」がスッと見えてきます。

この記事では、絵の具が濁る理由と、混色で失敗しない基本ルール、そして色を活かすためのコツを段階的にまとめていきます。

混色の仕組みがわかると、青だけでなく赤・黄・緑など、どの色を扱うときも迷いが減り、狙った色に近づけやすくなります。

【この結論まとめ】

  • 絵の具の混色は「少量ずつ」「色相環で近い色どうし」「三色以上は極力混ぜない」が基本です。
  • 濁りの正体は「補色どうし」「白黒の入れすぎ」「顔料の違い」による彩度ダウンで起こります。
  • 明度と彩度をコントロールすると、同じ色でも立体感や奥行きが出て、画面の仕上がりが安定します。
  • 実際には失敗パターンが決まっているので、よくある濁りをパターン別に知っておくとリカバリーもしやすくなります。
  • パレットの色数や選び方を絞ると、混色の練習と実践が両方スムーズに進みます。

ここから順番に、混色の基本から濁りの理由、配色やパレットの組み方まで見ていきましょう。

目次

絵の具の混色で失敗しない基本ルールをざっくり押さえる

最初に押さえたいのは「どう混ぜると失敗しやすいか」の逆を考えて、シンプルな混色ルールを決めてしまうことです。

混色の基本ルールを3つに絞ると、普段の制作で迷う場面が一気に減っていきます。

【混色で失敗しない基本ルールの整理】

ルール内容の目安
少しずつ足す濃い色・強い色を少量ずつ加えることで、行き過ぎを防ぐ
近い色から混ぜる色相環で近い位置の色どうしを混ぜると濁りにくい
三色以上をむやみに混ぜない顔料の種類が増えるほど彩度が落ち、灰色に近づきやすい

(出典:ホルベイン工業株式会社)
※本内容は執筆時点。最新情報は公式サイト確認。

絵の具の混色は「少しずつ足す」がいちばん安全

混色で一番起こりやすい失敗は、濃い色を一度に入れすぎて取り返しがつかなくなるパターンです。

特に、青・黒・濃い緑などは彩度も明度も強いので、ほんの少し加えただけでも全体の印象が大きく変わります。

基本は「薄い色をベースに出しておいて、濃い色を爪楊枝の先くらい少しずつ足していく」というイメージを持つと安全です。

ここがポイント:
濃い色をベースに薄い色を足すのではなく、薄い色をベースに濃い色を少量ずつ足すと、狙ったところで止めやすくなります。

色相環で近い色から混ぜると濁りにくい

色相環で近い位置にある色どうしは、混ぜてもしっかり彩度を保ちやすい性質があります。

例えば、青と青緑、黄と黄緑、赤とオレンジなど「となり合う色」を中心に混色すると、くすみにくく鮮やかな中間色がつくれます。

逆に、青とオレンジ、赤と緑のような向かい合う色(補色どうし)は、混ぜた瞬間に濁りやすい組み合わせです。

注意点:
配色を考えるときは、まず色相環で近い色どうしで中間色を作り、濁りや落ち着きを足したいときだけ少量の補色を加えるイメージにすると安定します。

三原色は万能ではないと理解しておく

「シアン・マゼンタ・イエローを混ぜればどんな色でも作れる」という説明を目にすることがありますが、実際の絵の具では理論どおりにいかないことが多いです。

絵の具にはそれぞれ固有の顔料が使われていて、光の三原色や印刷の理論だけでは説明しきれない癖があります。

そのため、三原色だけで全色を作ろうとすると、無理に混ぜる回数が増え、結果として彩度が落ちて濁りやすくなります。

一言まとめ:
「三原色=何でもできる魔法の色」というより、「混色の基準になる便利な色」と考えると、混ぜすぎを防ぎやすくなります。

絵の具が濁る理由を色の仕組みからスッキリ整理

絵の具が濁るとき、実際には「彩度が下がって中間的な色になっている」状態が多いです。

どんなときに彩度が落ちやすいかを知っておくと、「今は危ない組み合わせだな」と事前に気づきやすくなります。

【濁りやすい組み合わせと原因】

組み合わせ濁る主な理由避ける・活かすコツ
補色どうし互いの色を打ち消し合い、中間的なグレー寄りになる少量の片側を加えて彩度調整に使う
三色以上の混色顔料の種類が増え、光を複雑に吸収してしまう役割の違う2色+微調整1色までに絞る
白+黒の入れすぎ明度調整のつもりが彩度まで大きく下げてしまう白黒で調整する前に、同系色での調整を試す

(出典:日本色彩学会)
※本内容は執筆時点。最新情報は公式サイト確認。

補色どうしを混ぜると彩度が一気に落ちてグレーになる

色相環で向かい合う色(赤と緑、青とオレンジ、黄と紫など)は、混ぜるとお互いの色みを打ち消し合いやすい組み合わせです。

この状態になると、色のはっきりした方向性が弱まり、くすんだ茶色やグレーに近づいていきます。

ただし、補色どうしの関係は「濁りやすいからダメ」というより、「彩度を下げて落ち着きを出すために少量だけ混ぜる」と考えると便利です。

要点まとめ:
補色は「たくさん混ぜると濁る相手」ですが、「ほんの少し加えると鮮やかさをちょうどよく落ち着かせる調味料」のように使えます。

絵の具ごとの顔料の違いで予想外に濁ることがある

同じ「青」や「赤」と書かれたチューブでも、メーカーやシリーズによって顔料の種類が異なります。

顔料が変わると、他の色との混ざり方や、光の吸収・反射の具合も変わるため、理論どおりの結果が出ないことも珍しくありません。

特に、すでに複数の顔料をブレンドした「便利色」と、別の色をさらに混ぜると、一気にくすんでしまうことがあります。

ちょっと深掘り:
顔料番号(例:PB29、PY3など)がパッケージに書かれている絵の具は、同じ番号どうしなら他メーカーでも性質が近くなりやすいので、混色結果を安定させたいときの判断材料になります。

水の量と重ね塗りも濁りやすさに影響する

混色というとパレット上での混ぜ方に意識が向きがちですが、水の量や紙の上での重ね塗りも色の濁りに関わります。

水を含ませすぎると紙の上で顔料が動き回り、意図しない色どうしが混ざってにごって見えることがあります。

また、乾いていない層の上に次の色を重ねると、下の色が溶け出して予想以上に混ざってしまうことも多いです。

注意点:
水彩やアクリルで濁りを抑えたいときは、層ごとの乾き具合を確認しながら進めたり、濃度を少し高めにして「必要なところだけ重ねる」意識を持つと安定します。

濁らせない配色のコツ|色相環と「近い色」から考える

濁らない混色を目指すなら、「色をどう混ぜるか」と同時に「そもそもどんな配色にするか」を決めておくと楽になります。

色相環で近い色をベースに配色を組み立てると、自然にまとまりやすく、混色の失敗も減っていきます。

【色相環を使った配色イメージ】

配色タイプ色相環での距離感印象の目安
類似色配色30〜60度以内落ち着きがあり統一感のある雰囲気
分割補色配色補色の近く2色メリハリがありつつ柔らかい印象
トライアド配色120度間隔の3色カラフルで元気な印象だが使い方に工夫が必要

(出典:日本色彩学会)
※本内容は執筆時点。最新情報は公式サイト確認。

色相環で30〜60度以内の色をメインにまとめる

全体の雰囲気を安定させたいときは、色相環上で30〜60度以内に収まる色をメインカラーとして選ぶと、自然と統一感が出てきます。

例えば、黄色〜黄緑〜緑、青緑〜青〜青紫といった範囲で色を選ぶと、混色しても大きく濁らず、きれいなグラデーションが作りやすくなります。

この範囲を「今日のメインゾーン」と決めておくと、パレットの上でもどの色を混ぜるか迷いにくくなります。

要点:
まず「今日はどのゾーンの色を中心に使うか」を決めてから色を出すと、混色も配色も一度に安定しやすくなります。

アクセントカラーは1〜2色に絞ると画面が整理される

メインゾーンを決めたら、そこから少し離れた位置の色をアクセントとして1〜2色だけ選ぶと、画面にメリハリが生まれます。

アクセントカラーは、メインカラーと補色関係にある色や、その手前の分割補色を選ぶと、目線を引きつける効果が出やすいです。

ただし、アクセント用の色を増やしすぎると、そのぶん混色の組み合わせも増え、濁るリスクが高くなります。

失敗しないコツ:
アクセントカラーは「主役にしたい部分だけに塗る」と決めておき、他の場所ではメインゾーンの色だけでまとめると、全体がごちゃつかずにすみます。

背景は彩度と明度を少し落として主役を引き立てる

主役のモチーフを目立たせたいときは、背景の彩度と明度を少しだけ落とすと、自然と視線が集まりやすくなります。

具体的には、背景には補色を少量混ぜて彩度を抑えた色や、明度を少し下げた落ち着いたトーンを使うと、主役とのコントラストがはっきりします。

この「背景をあえて少し濁らせておく」という考え方を持つと、濁りをネガティブなものではなく、役割を持たせた表現として活かしやすくなります。

覚えておきたい:
すべての色を鮮やかにしようとすると画面がうるさくなるので、「鮮やかなのは主役だけ」「背景は一段落とす」と考えると、濁りもコントロールの一部として扱えるようになります。

明度と彩度をコントロールして立体感と奥行きを出す

同じ色でも、明度と彩度を少し変えるだけで、近くに見えたり遠くに見えたり、立体感が出たりと印象が大きく変わります。

混色の段階で「明るさ」と「鮮やかさ」を意識して調整できると、濁りを避けながら表現の幅を広げやすくなります。

【明度・彩度と見え方の目安】

条件見え方の傾向混色時のポイント
明度差が大きい形がはっきりし、コントラストが強くなる主役と影・背景で明度に差をつける
彩度が高い近く・手前に見えやすい画面の焦点に使う
彩度が低い遠く・奥に見えやすい背景や影に使う

(出典:ターナー色彩株式会社)
※本内容は執筆時点。最新情報は公式サイト確認。

明度差があると形がはっきりして立体感が出る

同じ色相でも、明るい部分と暗い部分の差が大きいほど、形の境界がくっきりして立体感が出やすくなります。

例えば、赤いリンゴを描くときに、明るいハイライト部分と、反対側の暗い影部分の明度差をしっかりつけると、丸みがはっきり見えてきます。

このとき、黒だけで暗くするのではなく、同系色の濃い色を混ぜたり、補色を少し足すことで、彩度を保ったまま深みを出すことができます。

実践ポイント:
「暗くしたい=黒を足す」ではなく、「同系色を濃くする」「補色を少しだけ加える」と考えると、立体感を出しつつ濁りを防ぎやすくなります。

彩度を落とした色を影や遠景に使うと奥行きが出る

遠くにあるものや影の部分は、現実世界でも少しグレーがかって見えることが多いです。

その感覚を絵に取り入れるときは、ベースの色に補色を少量足して彩度を落とし、ややくすんだ色を影や遠景に使うと、自然な奥行きが生まれます。

特に風景画では、手前ほど彩度が高く、奥に行くほど彩度が低くなるように意識すると、空気感の表現につながります。

アドバイス:
影や遠景には「少し濁った色」をあえて使うことで、手前の鮮やかな部分とのコントラストが生まれ、画面全体が落ち着いて見えます。

白と黒の入れすぎは彩度を落とすので注意する

明るくしたいときに白を、暗くしたいときに黒を足すのは便利ですが、入れすぎると元の色の鮮やかさが弱くなってしまいます。

白を多く入れた色はパステル調になりますが、彩度が落ちると「にごった明るい色」に見えることもあります。

黒も同様に、入れすぎると「暗くなった」以上に、色みそのものが見えにくくなり、どの色を塗ったのか分かりづらくなってしまいます。

失敗しないコツ:
明度調整をするときは、まず同じ系統の明るい色・暗い色で調整し、それでも足りない部分だけ白や黒をほんの少し足すようにすると、彩度を保ちやすくなります。

失敗しにくい絵の具の混ぜ方・順番と具体的ステップ

実際の制作では、「どの順番で混ぜるか」「どこまで混ぜるか」を決めておくと、色づくりがぐっと安定します。

ここでは、混色の手順をステップとして整理し、毎回同じ流れで進められるようにしていきます。

【混色の基本ステップ】

ステップ内容ポイント
1ベースカラーを決める主役になる色を最初にパレットに出す
2濃い色を少量ずつ足す爪楊枝や筆先でごく少量ずつ混ぜる
3紙でテストしてから本番に塗るスウォッチで乾いた色も確認する

(出典:ホルベイン工業株式会社)
※本内容は執筆時点。最新情報は公式サイト確認。

パレット上で試しながら少量ずつ色を足していく

いきなり本番の紙の上で混ぜると、やり直しが難しくなりがちです。

まずはパレットの上で、ベースカラーに対して濃い色を少しずつ加え、目で見ながら変化の段階を確認します。

このとき、1回ごとに「今の色は何に使えそうか」を意識しておくと、途中の色も無駄になりにくくなります。

ここがポイント:
濃い色を足すときは「一気に理想の色に近づけよう」とせず、「少し変えて確認する」という感覚で段階を踏むと、失敗が減ります。

紙に出す前にテストスウォッチで色を確認する

パレットで見ている色と、紙に塗って乾いたあとの色は、思った以上に違って見えることが多いです。

特に水彩や透明感のあるアクリルでは、紙の白さや水の量によって、明るさや鮮やかさが大きく変化します。

小さな紙に何段階かの濃さでスウォッチを作り、本番に塗る前に「乾いたときの色」を確認しておくと安心です。

要点まとめ:
混色のたびに小さなテストスウォッチを残しておくと、後から同じ色を再現したいときの参考にもなります。

グラデーションや中間色は三色以上を混ぜずに作る

グラデーションや微妙な中間色を作りたくなると、つい多くの色を足したくなります。

しかし、三色以上を本格的に混ぜると顔料の種類が増えすぎ、どんどん彩度が落ちて濁りが強くなっていきます。

基本は「2色で方向性を決めて、必要なら3色目をごく少量だけ足す」という作り方にすると、色の表情を保ちやすいです。

失敗しないコツ:
「よくわからない色になってきた」と感じたら、一度立ち止まり、「どの色を足したのか」を振り返ってから次の色を考えると、泥沼化を防げます。

よく濁る要注意パターンとトラブル別のリカバリー方法

どれだけ気をつけていても、制作の中で「思ったより濁った」と感じる場面はどうしても出てきます。

よくある濁りのパターンごとに、どのように立て直すかを知っておくと、本番での安心感がぐっと増します。

【濁りトラブルとリカバリーの目安】

状態原因の目安リカバリーの方向性
全体が灰色っぽい色数を混ぜすぎた明度・彩度のコントラストを作り直す
一部だけドロッと濁る水分量や重ねすぎ上から色をかぶせてまとめる
何色か分からない部分が増えた補色を混ぜすぎた主役の色を塗り直して方向性を戻す

(出典:リキテックス)
※本内容は執筆時点。最新情報は公式サイト確認。

全体が灰色っぽくなったときは「コントラスト」を戻す

画面全体が灰色がかってしまったときは、単に「にごった」というよりも、「明度と彩度の差が失われた」状態になっていることが多いです。

この場合は、一部にしっかりとした暗さや鮮やかさを戻してあげると、全体の印象が締まりやすくなります。

具体的には、「ここを一番暗くする」「ここだけ少し鮮やかにする」といったポイントを決め、その部分だけ色を足し直すと、画面の空気が変わります。

見逃せないのが:
全体を塗り直すよりも、コントラストを作りたい場所に絞って手を入れる方が、時間も絵の勢いも保ちやすくなります。

局所的にドロッと濁った部分は上から色をかぶせて整える

一部だけ絵の具が厚く溜まり、ドロッと濁ってしまうこともよくあります。

この場合、無理に絵の具を拭き取ろうとすると紙が傷んだり、さらに色が濁ってしまうことがあります。

不透明性の高い絵の具(ガッシュや不透明水彩、アクリルなど)なら、その上からやや明るい色や背景色をかぶせて形を整え、目立たなくする方法も有効です。

判断の基準:
「質感として面白ければ活かす」「どうしても気になるなら上から整える」と決めておくと、その場で迷いすぎずに済みます。

最初から描き直すか悩んだときの判断基準を持つ

濁りが気になりすぎて、「もう一度全部描き直した方が早いかもしれない」と感じる場面も出てきます。

そのときは、「主役の形が崩れているか」「色の方向性が完全に分からなくなっているか」を基準に考えると判断しやすくなります。

主役の形がまだ生きていて、色だけが気になる場合は、部分的なリタッチで立て直せることが多いです。

迷ったらここ:
一度離れて全体を眺め、「どこが一番気になるのか」を紙に書き出してみると、本当に描き直すべきかどうかが見えやすくなります。

初心者・中級者・子ども向けのおすすめパレットと色選び

混色の理解を深めるには、最初から色数を増やしすぎないことも大切です。

レベルや目的に合わせてパレットの色数と構成を決めておくと、混色の練習と作品づくりの両方がスムーズになります。

【レベル別おすすめパレットイメージ】

タイプ色数の目安特徴
初心者6〜8色暖色・寒色の組み合わせをシンプルに確認しやすい
中級者10〜12色顔料の違いや混色の癖を意識して選べる
子ども12色前後実験しながら基本的な色づくりを体験しやすい

(出典:日本色彩学会)
※本内容は執筆時点。最新情報は公式サイト確認。

初心者は「暖色・寒色を1組ずつ」の6〜8色パレットが扱いやすい

混色に慣れていない段階では、まず「暖かい赤・冷たい赤」「暖かい青・冷たい青」といったペアを意識すると、濁りやすい組み合わせが分かりやすくなります。

例えば、レモンイエローとカドミウムイエロー系、シアン系の青とウルトラマリン系の青、クリムゾン系とオレンジ寄りの赤、といったセットにすると、暖色・寒色の違いを確認しやすいです。

この6〜8色で徹底的に混色を試し、「どのペアが鮮やかで、どのペアが落ち着くか」を体で覚えていくイメージです。

要点:
最初から多色セットに頼るより、「少ない色で多くの色を作る」経験を積んだ方が、後々の色選びがぐっと楽になります。

中級者は目的に合わせて顔料の番号まで見て選ぶ

ある程度混色に慣れてきたら、パッケージに書かれた顔料番号(例:PB29、PY3など)にも注目してみると、色選びの精度が一段上がります。

同じ「コバルトブルー」でも、顔料が違えば混色の結果も変わるため、自分がよく使う組み合わせに適した顔料を選べると、濁りにくいパレットを自分で組めるようになります。

目的ごとに「風景用」「人物用」などテーマ別のパレットを作ると、色を出す段階から迷いが減り、制作に集中しやすくなります。

ちょっと深掘り:
顔料番号が少ないシンプルな色ほど、混色したときに結果が予想しやすく、パレット全体のコントロールもしやすくなります。

子どもの学習用には「混色で作れる色」を実験できるセットが便利

子どもの学習や入門用には、最初から完成された多色セットを使うだけでなく、「どの色が混ざるとどんな色ができるか」を遊び感覚で試せる構成が向いています。

例えば、「赤・黄・青+白+黒」といったベーシックなセットに、数色だけ便利な中間色を加えておくと、混色の面白さと仕上がりの満足感の両方を味わいやすくなります。

この段階では、完璧な配色よりも、「混ぜたらこうなった」という発見そのものが、色の理解や観察力につながります。

アドバイス:
子どもと一緒に混色表を作りながら、「濁った色も役割がある」という視点を共有しておくと、失敗を恐れずに色で遊べるようになります。

(出典:日本色彩学会)

まとめ

ここまで、絵の具の混色で失敗しないための基本ルールと、濁らせない配色や作り方の考え方を整理してきました。

混色で一番大切なのは、「薄い色をベースに少しずつ足す」「色相環で近い色を中心に混ぜる」「三色以上をむやみに混ぜない」というシンプルな軸を持つことです。

絵の具が濁るときには必ず理由があり、補色どうしを混ぜすぎている、顔料の種類が多すぎる、白や黒を入れすぎている、といったパターンに当てはまることがほとんどです。

明度と彩度を意識してコントロールし、背景や影にはあえて彩度を落とした色を使うことで、濁りも「奥行きや落ち着きをつくる道具」として活かせるようになります。

最後にもう一度、今日のポイントを振り返っておきましょう。

  • 薄い色をベースに濃い色を少量ずつ足すと、行き過ぎを防げます。
  • 色相環で近い色どうしの混色を基本にすると、濁りにくい中間色が作れます。
  • 補色や白黒は「少しだけ足して調整する調味料」として使うと、彩度を保ちやすいです。
  • 明度差と彩度差を意識すると、立体感と奥行きが出て、全体のまとまりが良くなります。
  • パレットの色数を絞り、レベルに合わせたセットを使うと、混色と制作の両方がスムーズになります。

次に絵を描くときは、まずパレットに出す色を少し減らして、「どのペアを混ぜるか」「どのゾーンの色を中心に使うか」を決めてからスタートしてみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 混色するとすぐ灰色っぽくなってしまうのはなぜですか?
A. 補色どうしや三色以上を一度に混ぜていることが多いです。色数を2色までに絞り、どうしても足りないときだけ3色目を少量足すようにすると、灰色化を防ぎやすくなります。

Q. 白を足したら明るくなるはずなのに、くすんで見えるのはなぜですか?
A. 白は明るさを上げると同時に彩度も下げてしまいます。同系色の明るい色で調整してから、最後の微調整として白を少量だけ使うと、くすみを抑えやすくなります。

Q. 子どもの絵の具がすぐ濁ってしまうとき、どう教えれば良いですか?
A. 「今日は3色だけで遊んでみよう」と色数を絞るのが効果的です。赤・黄・青など、役割の違う色を少なめに出し、混ぜた結果を一緒に見ながら楽しむと、自然と濁りにくい組み合わせを覚えていきます。

Q. 透明水彩とアクリルでは、混色の考え方は変わりますか?
A. 基本ルールは共通ですが、透明水彩は水と紙の白、アクリルは塗り重ねの厚みが特に重要です。透明水彩では水の量と乾き具合を、アクリルでは不透明度と重ね順を意識すると、濁りを抑えやすくなります。

Q. 一度濁ってしまった部分は、完全に元の色に戻せますか?
A. 完全に元通りにするのは難しいことが多いです。ただし、不透明色で上から塗り直したり、周囲の色とのコントラストを再構成することで、画面全体としての印象を整えることは十分に可能です。

Q. 三原色だけで絵を描く練習はした方がいいですか?
A. 三原色だけの練習は色の関係を理解するのにとても役立ちます。一方で、実際の制作では便利な中間色も適度に取り入れた方が表現しやすくなるので、「練習用」と「作品用」でパレットを使い分けるとバランスが良くなります。

参考文献・出典

  1. ホルベイン工業株式会社「絵具の基礎知識」
  2. ターナー色彩株式会社「絵具の基礎知識 色の三属性」
  3. 日本色彩学会「色彩に関する基礎資料」
  4. Liquitex「Color mixing basics」
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