いろは順とは何かと五十音図の歴史がサッとひと目でわかる早見表

いろは順と五十音図

いろは順と五十音順、どちらも国語の授業で名前だけは聞いたことがあるはずです。

でも、実際には「何がどう違うのか」「なぜ今は五十音図が主流なのか」が、意外とあいまいなままになりがちなんですよね。

しかも歴史的仮名遣いや旧仮名、いろは歌の意味まで出てくると、一気にハードルが上がったように感じてしまいます。

そこでこの記事では、いろは順とは何かと五十音図の歴史の違いを「早見表」として整理しながら、言語史の流れもいっしょにたどっていきます。

結論としては、いろは順は「歌から生まれた順番付けの文化」、五十音図は「音のしくみを整理した学問的な表」として、それぞれ役割が分かれていると考えるとスッと腑に落ちます。

この違いが分かると、辞書や古い資料の読みやすさが一段階アップし、日本語史の本を読むときの土台にもなってくれます。

【この結論まとめ】

  • いろは順は、いろは歌にもとづく47文字の並びで、今は主に番号付けや伝統的な場面に残っている
  • 五十音図は、母音段と子音行で整理された音声的な表で、辞書や公文書など現代の標準配列になっている
  • 旧仮名(ゐ・ゑなど)や「ん」の扱いの違いを押さえると、仮名の歴史と古典テキストがぐっと読みやすくなる
目次

いろは順とは何かと五十音図の歴史の違いを早見表で押さえる

最初に、いろは順と五十音順の違いを、ざっくり「スペック表」として見ておくと全体像がつかみやすくなります。

ここを押さえておくと、このあと出てくる細かい歴史や旧仮名の話も整理しやすくなります。

【いろは順と五十音順の基本比較】

項目いろは順五十音順(五十音図)
並び方の起点「いろはにほへと…」の歌に沿って並ぶ「あいうえお」から始まり、行×段で並ぶ
文字数の目安もともと47文字(仮名が一度ずつ登場)基本46文字+「ん」などを別扱い
旧仮名の扱いゐ・ゑ・をなどが歌の中に含まれる現代仮名ではゐ・ゑを使わず、行・段は維持
「ん」の扱い原形のいろは歌には登場しない独立した仮名として末尾に位置づけられることが多い
成立の背景手習い歌・仏教的な教訓歌として普及音韻構造を整理するための学問的な音図として発展
主な用途かつての辞書・名簿、今は座席・区分記号など辞書・教科書・公文書など、現代日本語の標準配列

(出典:国立国語研究所)
※本内容は執筆時点。最新情報は公式サイト確認。

この表を見ると、いろは順は「歌にもとづく順番」であり、五十音図は「音にもとづく配置」であることがはっきり分かります。

いわば、いろは順は文化的な順番付けのルール、五十音図は音の地図のような存在だと考えるとイメージしやすいです。

ここがポイント:
いろは順と五十音図はどちらも仮名を並べたものですが、歌由来か音声由来かという出自の違いが、そのまま役割の違いにもつながっています。

文字の並び方を比較した一覧でざっくりつかむ

いろは順は「いろはにほへと…」という一続きの歌の流れに沿って仮名を並べるのが特徴です。

一方、五十音順は「あいうえお」の母音と、か行・さ行といった子音行が「表」の形で組み合わさった並びになっています。

縦書きで本を見ると、いろは順は長いひと列のリスト、五十音順はマス目の一覧、という印象の違いが出てきます。

ここがポイント:
並び方のイメージとしては、いろは順は「一列の歌」、五十音順は「行と段が交差する一覧表」と覚えておくと、見分けやすくなります。

文字数・使われている仮名の違いを数字で押さえる

いろは順のもとになっているいろは歌は、仮名を一度ずつ使うことを意識した47文字前後の構成になっています。

仮名の種類が現在とは少し違い、ゐ・ゑ・をなどの旧仮名を含む一方で、「ん」はまだ独立した仮名として使われていません。

五十音図は、基本的に「五つの母音×十の子音行」という考え方で整理され、現代仮名では46文字を標準としつつ、「ん」は表の外側や末尾に別枠で置かれることが多いです。

ここがポイント:
文字の数とセットに注目すると、いろは順は「旧仮名を含む47文字」、五十音図は「46文字+ん」という構造の違いが見えてきます。

いろは順という並び方を、いろは歌からスッと理解する

いろは順を理解する近道は、もとになっている「いろは歌」そのものを眺めてみることです。

全体が一つの教訓歌として作られ、仮名が一度ずつ使われるように工夫された、とてもよくできた作品になっています。

いろは歌の全文と現代表記をざっくり確認する

いろは歌は、仏教的な無常観をやわらかなことばで表現した教訓歌として知られています。

もともとは漢字かな混じりで書かれますが、ひらがなだけにしても意味の流れは十分追うことができます。

【いろは歌の主な句と現代表記】

句(ひらがな)代表的な漢字かな混じり表記大まかな意味のイメージ
いろはにほへと色は匂へど美しい色はよく映えるけれども
ちりぬるを散りぬるをやがて散ってしまうものだ
わかよたれそ我が世誰ぞ自分のこの世は誰のものか
つねならむ常ならむいつまでも続くものではない
うゐのおくやま有為の奥山変化に満ちた奥深い山のような世の中で
けふこえて今日越えて今日という日を越えていっても
あさきゆめみじ浅き夢見じ浅はかな夢は見ないでおこう
ゑひもせず酔ひもせず迷いに酔いしれもしないでいよう

(出典:仁和寺)
※本内容は執筆時点。最新情報は公式サイト確認。

ここでは細かな文法解釈よりも、「仮名が一度ずつ登場する手習い歌」としての役割を意識しておくと、いろは順とのつながりが見えやすくなります。

ここがポイント:
いろは歌は、無常をうたう教訓歌であると同時に、仮名の種類を一通り学べる手習い歌としても機能していて、その並びがそのまま「いろは順」の土台になっています。

いろは順の配列ルールと覚え方

いろは順は、このいろは歌の仮名の並びをそのまま順番付けに使ったものです。

実際には、清音部分だけを抜き出したり、重複を調整したりしながら、辞書や名簿で扱いやすいように整えられました。

たとえば、古い資料では「い・ろ・は・に・ほ・へ・と・ち・り・ぬ・る・を…」という流れで名前や項目が並び、今でいう「あ・か・さ…」の感覚に近い役割を果たしていました。

ここがポイント:
いろは順は、歌の流れをそのまま順番付けに転用したものと考えると、「歌=順番のルール」というイメージで覚えやすくなります。

いろは順が担ってきた役割と、今も残る場面

かつてはいろは順が、辞書や帳簿、名簿などで広く使われていました。

江戸時代の本を開くと、索引や目次がいろは順で並んでいる例も少なくありません。

現代では、辞書や公的な文書のほとんどが五十音順に切り替わりましたが、座席の区分、番付、商品名のシリーズなど、いろは順ならではの味わいを活かした場面もまだ残っています。

ここがポイント:
現代ではいろは順は主役ではなくなりましたが、「区分のラベル」や「伝統的な雰囲気づくり」に使われることで、静かに生き続けています。

五十音図の並び方と成り立ちをやさしくたどる

五十音図は、仮名を「母音」と「子音行」の組み合わせで整理した、日本語の音の地図のようなものです。

現在の辞書や教科書で標準の配列になっているだけでなく、日本語の音韻を考えるうえでも欠かせない表になっています。

母音段と子音行で見る五十音図の構造

五十音図の基本は、縦に「あ行・か行・さ行…」、横に「あ・い・う・え・お」を並べるマトリクス構造です。

この交点に「あ・か・さ…」といった仮名が一つずつ入ることで、音の位置づけが視覚的に分かるようになっています。

【五十音図の簡略レイアウト】

行(縦方向)代表的な並び(清音)
あ行あ・い・う・え・お
か行か・き・く・け・こ
さ行さ・し・す・せ・そ
た行た・ち・つ・て・と
な行な・に・ぬ・ね・の
は行は・ひ・ふ・へ・ほ
ま行ま・み・む・め・も
や行や・(い)・ゆ・(え)・よ
ら行ら・り・る・れ・ろ
わ行わ・(ゐ)・(う)・(ゑ)・を

(出典:国立国語研究所)
※本内容は執筆時点。最新情報は公式サイト確認。

や行やわ行には、歴史的には「ゐ」「ゑ」などが入っていた位置があり、現代表記では空欄的に扱われることも多い、という点も五十音図の「歴史の名残」として覚えておくと面白いところです。

ここがポイント:
五十音図は、単なる並び順ではなく、「母音×子音行」という音の位置関係をまとめた表だと思うと、日本語の音が整理された姿として見えてきます。

平安時代の音図から現在の五十音図になるまで

五十音図の原型は、平安時代中ごろに作られた「音図」と呼ばれる表にさかのぼると考えられています。

仏教経典の読み方を示すために、サンスクリットの音韻表をヒントにして、日本語の音を体系的に並べる試みが行われました。

その中で、母音と子音の組み合わせを行×段で整理する発想が生まれ、のちに仮名の教育や辞書編纂の場で活用されていきます。

ここがポイント:
五十音図は、単に便利だから使われているだけでなく、平安期の仏教や音韻研究の積み重ねの上に形作られた「学問的なツール」として誕生しています。

五十音図成立のざっくり年表で歴史を整理

五十音図が現在のかたちに近づくまでには、いくつかの段階があります。

ここでは細かな文献名をすべて覚える必要はなく、「おおよそこういう流れでまとまってきた」という感覚で年表を眺めておくと十分です。

【五十音図成立のざっくり年表】

時期の目安主な動き・資料特徴的なポイント
平安中期仏教経典の音訓付け用の音図サンスクリット音韻表の影響を受け、母音と子音行の発想が取り入れられる
平安末〜鎌倉僧侶や学僧による音図の整理行と段が揃った表が整い、日本語の音を体系的に学ぶ土台になる
室町〜江戸前期手習い書・字書への応用仮名の学習用として音図が使われ、教育のなかに浸透していく
江戸後期〜近代辞書・教科書での標準化五十音図が配列や教育の標準として定着し、現代まで受け継がれる

(出典:桐生市医師会)
※本内容は執筆時点。最新情報は公式サイト確認。

ここがポイント:
時代の流れで見ると、五十音図は「経典のための音図」から「学習と辞書のための標準表」へと用途が広がり、その過程で現在のかたちに近づいていったことが分かります。

いろは順と五十音図が使われる場面の違いで迷わない

現代の日本語の世界では、五十音順が「標準」、いろは順が「伝統的な場面での選択肢」という分担ができています。

どちらがどこで使われているのかを知っておくと、辞書や資料に出会ったときに戸惑いにくくなります。

辞書・名簿・公文書などでの標準的な使われ方

現代の国語辞典や小・中・高校の教科書、役所の多くの文書では、基本的に五十音順が標準の並びになっています。

学校で習う「あ・か・さ・た・な…」の感覚が、そのまま実務に使われていると考えてよいイメージです。

一方、歴史的な資料や古い辞書では、いろは順がそのまま索引や配列に使われている場合もあり、古典系の本を開いたときには注意しておきたいポイントになります。

【用途別の主な並び方の違い】

用途のイメージ主に使われる並び具体的な例
現代の辞書・教科書五十音順学習国語辞典、一般向け国語辞典、学校教科書の索引など
公的文書・名簿五十音順が中心住民名簿、各種名簿、官公庁の資料など
歴史的な辞書・字書いろは順・独自配列古語辞典の一部、江戸時代の字書など
伝統的な配列が好まれる場面いろは順座席区分、番付、コース名・商品名のシリーズなど

(出典:立教大学)
※本内容は執筆時点。最新情報は公式サイト確認。

ここがポイント:
普段は五十音順を前提に考えておき、古い資料や伝統芸能の世界などでは「いろは順の可能性がある」と意識しておくと、並び方で迷いにくくなります。

いろは順が今も生きているシーン

いろは順は、現代でも「雰囲気づくり」や「番号のバリエーション」として、さまざまな場面で使われています。

たとえば劇場やホールの座席区分で、「い・ろ・は・に…」と列名が付いているケースがあります。

また、商品シリーズやコース名で「あ・い・う…」ではなく「い・ろ・は…」を使うことで、少し落ち着いた和風のニュアンスを出している例も見られます。

ここがポイント:
いろは順は、機能的な便利さというより、「伝統」「遊び心」「和の雰囲気」を添える役割で選ばれている、とイメージしておくと理解しやすくなります。

学習・資格試験・研究でどちらに慣れておくと便利か

日本語学習や受験勉強、資格試験などでまず必須になるのは、やはり五十音順です。

辞書を引くときも、試験問題の選択肢を読むときも、基本は五十音順で並んでいると考えて問題ありません。

一方で、日本語史や古典文学をじっくり学びたい場合はいろは順も押さえておくと、古い辞書や資料に触れたときに理解しやすくなります。

ここがポイント:
実用面では五十音順にしっかり慣れておけば十分で、いろは順は「日本語史や古典を深く楽しみたい人のプラスアルファ」として押さえるのがバランスの良いやり方です。

歴史の流れで見るかなの並び方の変化をざっくり俯瞰する

いろは順と五十音図の違いは、単に並べ方の好みの問題ではなく、日本語観や学び方の変化とも関わっています。

長い時間軸で流れをながめると、それぞれの役割が入れ替わってきた背景が見えてきます。

平安〜江戸〜近代で変わっていく主流の並び

平安時代の日本では、仏教の経典研究とともに音図が作られ、一方で歌や手習いの世界ではいろは歌が広く親しまれました。

その後、江戸時代になると、いろは順や独自の配列を用いた字書・辞書が多く作られ、実務や教育の現場で活用されるようになります。

近代以降、学校教育や近代辞書の中で五十音図が標準として採用され、あいうえお順が日本人共通の土台になっていきました。

ここがポイント:
長い目で見ると、「歌にもとづくいろは」と「音図にもとづく五十音」が並行して存在し、近代以降に五十音図が主役の座に移っていった、という流れで理解できます。

いろは順から五十音順へ切り替わった背景

いろは順が徐々に主役の座を五十音順に譲っていった理由には、いくつかの実務的な要因があります。

一つは、五十音図のほうが音の構造を反映しているため、外国語との対比や音韻研究、発音指導などに使いやすい点です。

もう一つは、辞書や索引で大量の語を並べるとき、「行×段」で区切りながら整理できる五十音順のほうが、検索性が高く、機械的な処理にも向いていたという事情です。

ここがポイント:
いろは順が劣っていたというより、五十音順のほうが「音の構造」と「大量のデータ処理」に向いていたため、近代以降の実務で選ばれやすくなったと考えると納得しやすくなります。

かなの並び方から見える、日本語観の変化

いろは順の背景には、仏教的な無常観や歌の美しさといった、文化的・思想的な要素が色濃く残っています。

一方、五十音図は、音の構造を整理し、教育や辞書、研究に役立てる「機能性」を前面に押し出した表です。

かなの並び方の変化には、「言葉を教訓と美しさの世界で味わう見方」から、「音のしくみを分析し、道具として使いこなす見方」へのシフトが重なっているとも言えます。

ここがポイント:
かなの並び方をたどることは、日本語をどう捉えてきたかという発想の変化をたどることでもあり、いろは順と五十音図の違いには、文化と学問の両方の顔が映し出されています。

旧仮名づかい・廃止された仮名と並びの位置づけを整理する

いろは順と五十音図の違いをもう一段深く理解するには、「ゐ」「ゑ」「を」などの旧仮名がどのように扱われてきたかも一緒に整理しておくと便利です。

古典テキストや歴史的資料を読むときにも、ここが基礎知識として役立ちます。

ゐ・ゑ・を・ヰ・ヱなど、旧仮名の一覧

旧仮名の多くは、現代仮名の中で別の仮名に統合されており、いろは順と五十音図での位置づけも少しずつ違っています。

ここでは代表的な文字だけを取り上げて、いろは歌の中での位置と、五十音図のどこに対応するかを一覧で見ておきます。

【いろは順・五十音図と旧仮名の対応】

旧仮名いろは歌での位置の一例五十音図でのおおよその位置・現代表記
「うゐのおくやま」などに登場わ行い段に相当し、現代表記は「い」
「ゑひもせず」などに登場わ行え段に相当し、現代表記は「え」
文末の助詞として頻出現代表記では多くの場合「お」と同じ音だが、助詞としては「を」を維持
カタカナ表記の旧仮名現代では「イ」に統合されることが多い
カタカナ表記の旧仮名現代では「エ」に統合されることが多い

(出典:国立国語研究所)
※本内容は執筆時点。最新情報は公式サイト確認。

ここがポイント:
旧仮名は、いろは歌の中では自然に登場し、五十音図では行や段の一部として位置づけられていましたが、現代表記では多くが「あ・い・う・え・お」に統合されている、と押さえておくとスッキリします。

「ん」がいろは順にない理由と、追加されていった経緯

いろは歌の原型には、「ん」にあたる仮名が含まれていません。

これは、いろは歌が作られた時代には、「ん」がまだ独立した仮名として扱われておらず、音の位置づけも現在ほど安定していなかったことが背景にあります。

のちに、日本語の音を整理する中で「ん」を独立させる必要性が高まり、五十音図や辞書の配列の中で末尾に置かれるようになりました。

ここがポイント:
「いろはに『ん』がない」のは単なる抜けではなく、「ん」が歴史のなかであとから独立してきた仮名だから、と理解すると納得しやすくなります。

旧仮名を知ると古典テキストが読みやすくなる

古典文学や歴史的な文書では、旧仮名づかいが当たり前のように使われています。

このとき、「ゐ=い」「ゑ=え」「を=お」など、おおよその対応関係を知っていると、現代仮名に置き換えながら読むイメージがつかみやすくなります。

いろは順と五十音図の両方を意識しながら旧仮名を見ると、「どの音として扱われてきたのか」という歴史的な位置づけまで理解しやすくなります。

ここがポイント:
旧仮名は、いろは順と五十音図をつなぐ「歴史の橋」のような存在で、古典テキストを無理なく読むための頼もしい足場になってくれます。

辞書や索引での並びの実例を知っておくと安心できる

実際に辞書や索引を引く場面で、いろは順と五十音順の違いを意識しておくと「どこに載っているのか分からない」という不安が減ります。

ここでは、よく出会うパターンだけを整理しておきます。

国語辞典・漢和辞典・古語辞典での並びの違い

現代の国語辞典や学習辞典は、ほぼ例外なく五十音順で配列されています。

見出し語も、巻末索引も、「あ・か・さ・た・な…」の並びを前提にして探せば大丈夫です。

一方で、古語辞典や古い漢和辞典などには、いろは順や独自の配列を採用しているものもあり、慣れていないと戸惑うことがあります。

ここがポイント:
「今売られている一般的な辞書=五十音順」「古典系・古い辞書=いろは順や独自配列の可能性あり」と押さえておくと、最初にチェックすべきポイントが見えやすくなります。

名簿・索引・資料集での「ちょっとクセのある」並び

学校の名簿や、資料集の人名索引なども、基本的には五十音順が前提です。

ただし、テーマごとの区分やクラス名、章の見出しなどで、いろは順が部分的に使われることがあります。

たとえば「第い章・第ろ章・第は章…」といった見出しや、「い組・ろ組」といったクラス名の付け方は、いろは順の名残としてよく見かけるパターンです。

ここがポイント:
索引や見出しを開いたときには、「中身の配列は五十音か、区分ラベルはいろはか」の二つの視点で見ると、構造がつかみやすくなります。

並びの違いで迷わないための、ちょっとした習慣

どんな資料に出会ったときも、最初に「目次・索引の並び方」を軽く眺める習慣をつけておくと安心です。

五十音順か、いろは順か、あるいは数字やアルファベットを使っているかを、最初にチェックしておくイメージです。

そうすることで、本文を読む前の時点で「この本はこういうルールで並んでいる」と分かり、探しもののストレスをぐっと減らせます。

ここがポイント:
並び方に迷わないコツは、最初に「この本はどんな順番ルールでできているか」を確認することにあり、いろは順と五十音順の違いを知っておくと、そのチェックがぐっとスムーズになります。

目的別に使い分けると、かなの世界がもっと楽しくなる

いろは順と五十音図は、どちらか一方だけを覚えればよい、というものではありません。

自分の目的に合わせて「どちらを軸にするか」を決めると、かなの世界がもっと立体的に見えてきます。

日本語学習・試験対策で意識しておくとラクになる点

日本語学習や学校の試験、資格試験などでまず大切なのは、五十音図にしっかり馴染んでおくことです。

「行×段」の感覚が体に入っていると、新しい語彙や漢字を覚えるときにも整理しやすくなります。

いろは順は、基本的な学習が一通り進んだあとで、「日本語の文化的な側面を知るための知識」として触れていくと負担が少なくて済みます。

ここがポイント:
実務や試験の場面では五十音図が主役であり、いろは順は「少し余裕が出てきたときのプラスアルファ」と考えると、学習の優先順位がはっきりします。

古典・日本文化が好きな人が楽しめる視点

古典文学や和歌、能・歌舞伎、寺社文化などに触れると、いろは順やいろは歌がさりげなく顔を出す場面が増えていきます。

番付や巻物の見出し、仏教説話の中の表現など、いろは順を知っていると「ここにもいろはが生きている」と気づける小さな楽しみが増えます。

いろは歌の意味や背景を知ることは、日本語の歴史と日本文化の両方を味わう入り口にもなってくれます。

ここがポイント:
日本文化が好きな人にとって、いろは順は「作品や場面に隠れた小さなサイン」のような存在で、それを見つけられると作品世界の奥行きが一段深く感じられます。

研究・辞書好きの人向けの、もう一歩ディープな入口

辞書や日本語史、言語学に興味がある人にとっては、五十音図の構造やいろは順の歴史は格好の研究テーマになります。

五十音図をもとに日本語の音韻体系をながめたり、いろは順の採用された辞書を比較したりすると、「なぜこの時代にこの配列が選ばれたのか」という問いが自然に浮かび上がってきます。

その問いをたどること自体が、日本語を道具としてだけでなく、対象としても味わう入り口になります。

ここがポイント:
かなの並び方は、言語学や辞書史の世界への入り口でもあり、「どうしてこの順番なのか」を考え始めた瞬間から、日本語との付き合い方が一段深くなります。

まとめ

いろは順とは何かと五十音図の歴史を見比べると、日本語の文字と音の世界が立体的に見えてきます。

いろは順はいろは歌にもとづく文化的な並びであり、五十音図は音の構造を整理した学問的な表という、性格の違いがあることが分かります。

現代の辞書や教科書、公的な文書では五十音順が標準ですが、座席区分や番付、伝統的な資料などにはいろは順が静かに生き続けています。

旧仮名や「ん」の扱いまで含めて眺めると、仮名がどのように整えられ、どこで統合され、どこに歴史の名残があるのかも見えてきます。

最後にもう一度、この記事のポイントを整理すると次のようになります。

  • いろは順は、いろは歌をもとにした47文字前後の並びで、手習い歌と順番付けの文化を支えてきた
  • 五十音図は、母音段×子音行で音を整理した表で、近代以降の辞書・教育の標準配列として定着している
  • 旧仮名や「ん」の扱いの違いを押さえると、古典テキストや歴史的資料を読むときの見通しが良くなる

ここまでの流れを踏まえて、手元の辞書や古い本の索引を開き、「この本はどの並び方を使っているのか」を軽く確認してみてください。

それだけでも、いろは順と五十音図の世界がぐっと身近に感じられるはずです。

よくある質問(FAQ)

Q. いろは順と五十音順では、どの仮名セットが特に違うのですか。
A. 大きく違うのは旧仮名と「ん」の扱いです。いろは順のもとになっているいろは歌にはゐ・ゑ・をが含まれ、「ん」は登場しない一方、五十音図では46文字+「ん」を基本とし、ゐ・ゑは歴史的仮名として扱われます。

Q. いろは順は今でも辞書の配列として使われていますか。
A. 一般向けの国語辞典では、ほとんどが五十音順になっています。ただし、古典系の辞書や古い字書にはいろは順や独自配列が残っているものもあるため、古書や専門的な辞書を使うときは注意して目次や凡例を確認すると安心です。

Q. 五十音図は誰が作ったものなのでしょうか。
A. 現在の形に近い五十音図は、特定の一人の発明というより、平安期以降の学僧や研究者たちの音図研究の積み重ねで整ったと考えられています。仏教経典の読みに必要だったサンスクリット音韻表の影響も大きく、音の構造を整理する中で、行×段の発想が定着していったと見るのが一般的です。

Q. 日本語学習者は、いろは順も必ず覚えたほうがよいですか。
A. 実用面だけを見るなら、五十音順をしっかり覚えておけば十分です。いろは順は、古典文学や日本文化、日本語史に興味が出てきた段階で「プラスアルファ」として身につけると、負担も少なく、楽しみとしても広がりやすくなります。

Q. 旧仮名づかいといろは順・五十音図の関係は意識したほうがよいですか。
A. 古典や歴史的な文書を読む予定があるなら、意識しておくとかなり読みやすくなります。ゐ・ゑ・をなどの位置づけを、いろは順と五十音図の両方から眺めることで、どの音として扱われてきたかが分かり、現代表記への置き換えもスムーズになります。

Q. いろは歌の内容は、覚えておいたほうがよいのでしょうか。
A. 全部を完璧に暗記する必要はありませんが、リズムと大まかな意味を知っておくと理解が深まります。仮名が一度ずつ登場する手習い歌としての側面と、無常をうたう教訓歌としての側面の両方を意識すると、いろは順の背景が立体的に感じられます。

Q. これから日本語史を学びたい場合、どこから手を付けるのがおすすめですか。
A. まずは五十音図といろは順の違いを押さえ、次に旧仮名づかいや主要な文体の変化をざっくり眺めるのがおすすめです。そのうえで、日本語史の入門書や時代別の代表的な文献に触れていくと、かなの並び方の変化も自然とつながって見えてきます。

参考文献・出典

  1. 国立国語研究所「『五十音』の数はどうして五十ではないのですか」
  2. 立教大学「国語辞典はなぜ五十音順なのか」
  3. 真言宗御室派総本山 仁和寺「いろは歌」
  4. 語学総合サイト「日本語の奇跡 <アイウエオ>と<いろは>の発明」書籍紹介ページ
  5. 桐生市医師会「50音といろは/平安中期に作られた」
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