水彩でもデジタルでも、肌色だけは毎回ぶれてしまうと感じることはありませんか。
チューブの「うすだいだい」や既製のスキンカラーをそのまま使うと、どうしても平坦に見えたり浮いて見えたりしやすいです。
実は、肌色づくりのカギを握っているのは「ブラウンで入れる影の色」です。
ベースの肌色をどう決めるかよりも、その上にどんなブラウンの影を重ねるかで、血色や立体感、キャラクターらしさが大きく変わります。
この記事では、水彩やアクリルといったアナログと、デジタルイラストの両方に共通する考え方から、具体的なレシピや数値の目安までまとめて整理していきます。
色白肌から褐色肌までのバリエーション、ブラウン影で日焼け感を出すコツ、くすんでしまったときのリカバリー方法も一緒に見ていきましょう。
【この結論まとめ】
- 肌色は「ベース+ブラウン影+ハイライト」の3色で設計すると安定しやすいです。
- 水彩やアクリルでは赤+黄+少量のブラウンで、デジタルではやや黄色寄りの低〜中彩度が基本になります。
- ブラウン影は「黒に寄せない」「色相を少しずらす」「一度で塗り切らず薄く重ねる」の3つを意識すると、くすみにくくなります。
- 失敗したときは原因別に「強すぎる彩度」「暗すぎる明度」「灰色寄りのブラウン」を見直すと戻しやすいです。
水彩もデジタルも迷わない肌色の作り方とブラウンの影の基本

ここでは、水彩でもデジタルでも共通する「肌色の考え方」と「ブラウン影の役割」をざっくりつかんでおきます。
細かい技法の前に、設計図のイメージを持っておくと後のレシピも理解しやすくなります。
肌色は「ベース+影+ハイライト」で考えると設計しやすい
肌色は、ひとつの色で塗り切るよりも「3色セット」で考えた方が安定します。
具体的には次の3つです。
- ベースカラー:肌全体の印象を決める明るめの色。
- 影色:凹んだ部分や重なりに入る暗めの色。
- ハイライト:光が強く当たる部分の明るい色。
肌色がうまくいかないときは、この3つのどれかが極端だったり、役割があいまいになっていることが多いです。
ベースが明るくても、影が真っ黒に近いと一気に強すぎるコントラストになります。
逆に、影が弱すぎると顔が平面的に見えてしまいます。
ハイライトも、肌より明るいだけでなく「どんな色味で光っているか」を意識すると自然になります。
要点まとめ:
肌色は1色ではなく「ベース・影・ハイライト」の3色セットで考えると、色選びの迷いが減ります。
ブラウンの影が決めるのは「血色」「立体感」「肌質」
影色にブラウンを使うとき、単に「暗くする色」として扱うと、くすみや濁りの原因になりやすいです。
ブラウン影が決めているのは、次の3つの印象です。
- 血色:赤みが強いブラウンなら健康的、黄〜オレンジ寄りなら日焼け気味の印象。
- 立体感:ベースとの明度差が大きいほどコントラストが強くなり、立体感も強調されます。
- 肌質:柔らかいブラウンはふんわりした肌、硬いブラウンはシャープな肌の印象になります。
同じベースカラーでも、ブラウン影を赤寄りにするか、黄寄りにするか、少し紫寄りにするかでキャラクターの「体温」や「性格」が変わって見えます。
影にグレーや黒だけを使うと、血の気が抜けた印象になりやすいため、ブラウン側に少し振ってあげるのが安心です。
ちょっと深掘り:
ブラウン影は「暗さ」だけでなく「温度」と「柔らかさ」をコントロールする役割があり、ここでキャラクターらしさを出すイメージを持つと設計しやすいです。
水彩・アクリル・デジタルに共通する3つの肌色ルール
技法が違っても共通しているルールは、次の3つです。
- ルール1:ベース肌色は「やや黄寄り」で「高すぎない彩度」にしておく。
- ルール2:ブラウン影は「同系色を少し暗く+少し赤寄りか黄寄り」にずらす。
- ルール3:ハイライトは「白ではなく、少しだけ色を残した明るい色」にする。
この3つを意識しておくだけで、「とりあえず肌色っぽい色」で塗るよりも安定感が大きく変わります。
【水彩・アクリル・デジタルの肌色づくりの違いと共通点】
| 技法 | ベース肌色の特徴 | ブラウン影の入れ方 | 向いている表現 |
|---|---|---|---|
| 透明水彩 | 紙の白を活かした明るめの黄寄り肌 | 薄く溶いたブラウンを重ねて濃度で調整 | 透明感のある肌、やわらかい発色 |
| アクリル・ガッシュ | 不透明でしっかり塗れるやや落ち着いた肌色 | ベースより暗いブラウンを上から重ね塗り | グラフィック調、ポスターカラー風 |
| デジタル | モニター上で細かく調整できる低〜中彩度の肌色 | レイヤーモードやブラシでブラウン影を少しずつ足す | アニメ塗りから厚塗りまで幅広く対応 |
(出典:サクラクレパス)
※本内容は執筆時点。最新情報は公式サイト確認。
ここがポイント:
どの技法でも「黄寄りで落ち着いたベース+暗くしすぎないブラウン影+真っ白すぎないハイライト」が安定した肌色の共通項になります。
水彩・アクリルで作る肌色レシピとブラウン影の足し方

ここでは、透明水彩とアクリル・ガッシュでの具体的な肌色レシピを紹介します。
すべての色名はあくまで一例なので、手持ちの絵の具に置き換えながら読んでみてください。
透明水彩の基本肌色レシピ3パターン(色白・標準・褐色)
透明水彩では、紙の白さと水の量を大きく使うので、絵の具自体は想像以上に濃くても問題ありません。
よく使われるのは、赤系・黄系・少しだけブラウン系の3色です。
代表的な組み合わせのイメージは次のようになります。
【透明水彩の肌色レシピ一覧(基本3パターン)】
| 肌タイプ | 使用色の例 | 混色比の目安 |
|---|---|---|
| 色白肌 | ピンク系の赤+レモンイエロー+ごく少量のブラウン | 赤1:黄1:ブラウン0.1程度をかなり薄く溶く |
| 標準肌 | ややオレンジ寄りの赤+イエローオーカー+少量のブラウン | 赤1:黄1.5:ブラウン0.2程度 |
| 褐色肌 | オレンジ寄りの赤+イエローオーカー+ブラウンを少し多めに | 赤1:黄1.5:ブラウン0.5程度で濃いめに溶く |
(出典:サクラクレパス)
※本内容は執筆時点。最新情報は公式サイト確認。
ブラウン影を入れるときは、上のレシピからさらに水を少なめにした濃いブラウン寄りの色を用意します。
影の部分に一度で濃く置くのではなく、薄めた色を2〜3回に分けて重ねると、にじみやムラが自然な表情になります。
失敗しないコツ:
透明水彩の肌色は「最初は薄く、影は回数で濃くする」という意識を持つと、塗り過ぎによるくすみを防ぎやすいです。
アクリル・ガッシュで作る肌色と塗り重ねのコツ
アクリルやガッシュは不透明度が高いので、下地の紙色に左右されにくいのが特徴です。
その分、最初のレシピでしっかり肌色を決めやすくなります。
基本の考え方は透明水彩と同じで「赤+黄+ブラウン」ですが、アクリルの場合は白を混ぜる量を強めに意識します。
- 明るい肌:白を多めに混ぜて、赤と黄は少しだけ。
- 標準肌:白・赤・黄・ブラウンをバランス良く。
- 褐色肌:白は少なめにして、黄とブラウンを増やす。
乾くと少し暗く見えるので、塗っているときには「やや明るいかな」と感じるくらいが仕上がりとしてはちょうどよくなります。
影用ブラウンは、ベースに使った色に少しブラウンを足して暗くするか、別にブラウン+少量の赤で新しく作ると馴染みやすいです。
実践ポイント:
アクリルの肌色は「乾くと1段階暗くなる」ことを前提にしてレシピを組むと、完成時にちょうどいい明るさになりやすいです。
ブラウンを増やして作る日焼け肌・色黒肌のレシピ
日焼け肌や色黒のキャラクターを描くときは、ベースのレシピのうち「ブラウンの比率」を上げます。
その際に、単にブラウンを増やすだけだとくすみやすいので、次のバランスを意識します。
- 日焼け肌:黄とブラウンを増やし、赤は少し抑える。
- 色黒肌:ブラウンを増やしつつ、少しだけ赤と黄を増やして血色を残す。
ベースを濃くした分、ブラウン影はさらに暗い色で塗るのではなく、「透明感のある濃い影」というイメージで、水や白を混ぜてコントロールします。
注意点:
濃い肌色ほど影を黒に近づけたくなりますが、ブラウン影を黒寄りにし過ぎると重く見えやすいので、赤や黄を少し混ぜて色味を残すと自然になります。
紙色や下地色を活かした肌色づくりの工夫
水彩紙の白さや、アクリルで塗った下地色も肌色に大きく関わってきます。
少し黄みがかった紙を使うと、それだけで健康的な肌に近づきます。
逆に、真っ白な紙はコントラストが強く出るため、影色を少し柔らかめにして調整するとバランスが取りやすいです。
アクリルの場合は、ベースにごく薄いベージュを全面に塗っておき、その上から肌色を重ねると、急に明るすぎる部分が出にくくなります。
覚えておきたい:
肌色は絵の具だけでなく「紙や下地の色」も含めた全体で決まるので、自分のよく使う紙ごとに肌色スウォッチを残しておくと安定します。
デジタルでの肌色の作り方とブラウン影のカラーパレット

デジタルでは、色を何度でもやり直せる代わりに、選択肢が多すぎて迷いやすいところがあります。
ここでは、HSBを使った肌色の目安と、ブラウン影の数値の考え方を整理します。
HSBで見るベース肌色の数値目安(色白〜褐色)
デジタルの肌色は、HSBで考えると整理しやすいです。
目安として、次のようなイメージを持っておくと便利です。
【ベース肌色のHSB目安一覧】
| 肌タイプ | 色相Hの目安 | 彩度Sの目安 | 明度Bの目安 |
|---|---|---|---|
| 色白肌 | 20〜35付近の黄〜オレンジ寄り | 20〜35%前後 | 90〜100%前後 |
| 標準肌 | 25〜40付近の黄〜オレンジ寄り | 30〜45%前後 | 80〜90%前後 |
| 小麦肌 | 25〜40付近 | 35〜50%前後 | 70〜80%前後 |
| 褐色肌 | 25〜40付近 | 40〜60%前後 | 55〜70%前後 |
(出典:CLIP STUDIO公式サイト)
※本内容は執筆時点。最新情報は公式サイト確認。
この表はあくまで「色相は黄〜オレンジ寄り」「彩度は中くらい」「明度で肌の明るさを調整する」という考え方の目安です。
実際には、キャラクターの世界観や背景の色によって上下させていきます。
一言まとめ:
デジタルの肌色は「黄〜オレンジ寄りの低〜中彩度で、明度を上下させて肌タイプを決める」という考え方を持つと、パレットが組みやすくなります。
ブラウンの影色は「色相を少しずらす」と自然に見える
影色を選ぶときは、ベース色をそのまま暗くするよりも、色相を少しだけ赤側や黄側にずらすと自然になります。
たとえば、ベースのHが30前後なら、影は25〜35あたりにずらしながら、彩度と明度を調整していきます。
- 赤寄りブラウン影:血色感が増え、頬や指先などに向いています。
- 黄寄りブラウン影:日焼けや屋外の光を表現しやすいです。
- 少しだけ紫寄りの影:室内のひんやりした光や夕方の光などで使うと空気感が出ます。
完全なグレーや黒で影を作ると、ベースの黄〜オレンジとの相性が悪くなり、肌がくすんで見えやすいので注意が必要です。
失敗しないコツ:
ベースと同じ色相でそのまま暗くするのではなく、色相を少しだけ赤か黄に寄せつつ暗くすることで、きれいなブラウン影になりやすいです。
色白肌・小麦肌・褐色肌のデジタルパレット例
ベース・影・ハイライトの3色をセットで決めておくと、キャラクターごとに色がぶれにくくなります。
ここではイメージしやすいように、ざっくりとしたパレット例を挙げます。
【デジタル用肌色パレット例(ベース・影・ハイライト)】
| 肌タイプ | ベース色HSBの目安 | ブラウン影HSBの目安 | ハイライトHSBの目安 |
|---|---|---|---|
| 色白肌 | H30 S25 B95前後 | H28 S35 B75前後 | H35 S10 B100前後 |
| 標準肌 | H32 S35 B85前後 | H30 S45 B65前後 | H38 S15 B95前後 |
| 小麦肌 | H30 S45 B75前後 | H28 S55 B55前後 | H36 S20 B85前後 |
| 褐色肌 | H28 S55 B65前後 | H26 S65 B45前後 | H34 S25 B75前後 |
(出典:CLIP STUDIO公式サイト)
※本内容は執筆時点。最新情報は公式サイト確認。
実際の作業では、ここからさらにスポイトで微調整したり、背景に合わせて少し動かしたりして使っていきます。
判断の基準:
ベースとブラウン影の差は「明度で20前後、彩度で10〜20前後」を目安にしつつ、肌タイプによってコントラストを調整すると、まとまりやすくなります。
アニメ塗りとブラシ塗りで変わるブラウン影の選び方
アニメ塗りのように境界をくっきりさせる塗り方では、影のブラウンはやや彩度を落とし気味にしておくと馴染みやすいです。
逆に、ブラシ塗りや厚塗りでは、影色自体に少し彩度を残しておくと、にごりを感じにくくなります。
レイヤーモードは、アニメ塗りでは乗算レイヤーで影を作ることが多く、ブラシ塗りでは通常レイヤーに近い設定でやわらかく重ねる方法もよく使われます。
アドバイス:
アニメ塗りでブラウン影がきつく感じるときは、影レイヤーの不透明度を下げるか、影色自体の彩度を少し落として調整するとスムーズです。
キャラクター別に変える肌色とブラウン影|年齢・性別・世界観のレシピ

ここからは、キャラクターの年齢や性別、世界観によって肌色とブラウン影をどう変えるかを見ていきます。
同じレシピでも、影の濃さや色味を少し動かすだけで印象がかなり変わります。
子ども・10代・大人・シニアで変わる肌色と影のコントラスト
年齢ごとの肌描写では、コントラストの強さが大きなポイントになります。
子どもや10代は、影とハイライトの差を小さめにして、柔らかく描くと年齢らしさが出ます。
大人やシニアは、頬や目元などに少しだけ強めのブラウン影を入れると、落ち着きや生活感が伝わります。
【年齢別の肌色とブラウン影の傾向】
| 年代 | ベースの明るさ | ブラウン影の濃さ | コントラストの目安 |
|---|---|---|---|
| 幼児〜小学生 | 明るめで赤みをやや強く | ごく薄いブラウン影 | 影は1段階だけ暗くする程度 |
| 中高生 | 明るめ〜標準 | 少しだけ強めの影 | 影は2段階暗く、頬のブラウンは控えめ |
| 大人 | 標準〜やや落ち着いた明るさ | 中程度のブラウン影 | 影は2〜3段階暗く、鼻まわりや顎にも影を入れる |
| シニア | やや暗めで彩度低め | 影は柔らかく広めに | コントラストは中程度、彩度を落としてしっとりした印象に |
(出典:ATAM ACADEMY)
※本内容は執筆時点。最新情報は公式サイト確認。
ここがポイント:
若いキャラクターほどコントラストを弱めに、大人ほど影の範囲を少し増やすよう意識すると、年齢感を出しやすくなります。
女性キャラ・男性キャラ・中性的キャラのブラウン影の違い
女性キャラクターは、影色に少し赤やピンクを混ぜると、血色の良い印象になりやすいです。
男性キャラクターは、黄〜オレンジ寄りのブラウン影や、少し鈍くしたブラウンを使うと落ち着いた雰囲気が出ます。
中性的なキャラクターは、影のコントラストを少し弱めにしたり、赤みと黄みのバランスを調整して「どちらにも振れない色味」を目指すと安定します。
意外な落とし穴:
男女差を肌色だけで表現しようとすると極端になりがちなので、肌は控えめに、髪色や服装とのバランスで性別の印象を調整する方が失敗が少なくなります。
現代・ファンタジー・SFなど世界観別の肌色設計
現代風の世界観では、現実に存在しうる肌色の範囲で明るさとブラウン影を調整していきます。
ファンタジーでは、ベースや影に少しだけ紫や緑を混ぜることで、非現実的な雰囲気を出すこともあります。
SF寄りの世界では、少し青みを含んだ影や、金属的なハイライトを使うと世界観に合いやすいです。
補足:
世界観が特殊な場合でも、ベースをやや黄寄りにしておき、影やハイライト側で色を遊ぶと「人の肌」としての説得力を保ちやすくなります。
肌色がくすむ・濃くなりすぎるときのブラウン調整と失敗対策

肌とブラウン影は、少しの違いで「老けて見える」「濁って見える」といったトラブルが起きやすい部分です。
ここでは、水彩・アクリル・デジタルで共通しやすい失敗と、その対処法を一覧で整理します。
水彩・アクリルで起きがちな肌色トラブルとリカバリー方法
アナログでは、やり直しが難しい分、原因ごとの対処方法を知っておくと安心です。
代表的なパターンは次の通りです。
【肌色×ブラウン影のトラブル事例と対処一覧】
| 症状 | 主な原因 | 具体的な対処 |
|---|---|---|
| 肌がくすんで見える | ブラウンや黒を塗り重ね過ぎた、水が少な過ぎた | 薄く溶いた明るい肌色を上から重ねてトーンを上げる、次の層は水を多めにする |
| 影が濃くなり過ぎた | 一度に濃い色を置いた | まだ湿っていれば水を含んだ筆で吸い取る、乾いていれば薄い肌色や白を重ねてなじませる |
| 部分的に色ムラが目立つ | 水の量の差が大きい、紙の上でこすり過ぎ | 一度完全に乾かしてから、全体にごく薄い同系色を重ねる |
| 顔だけ色が浮いている | 背景や服との色相がずれている | 周囲にも同系のブラウンや黄を少し足して、全体の色相を寄せる |
(出典:ターナー色彩)
※本内容は執筆時点。最新情報は公式サイト確認。
失敗しないコツ:
アナログの肌色トラブルは「一度で仕上げようとすること」が原因になりやすいため、薄い色を複数回重ねて調整する前提で塗っていくと安定します。
デジタルでありがちなグレー肌・赤黒い影の直し方
デジタルのトラブルでよくあるのは、肌がグレーがかって見えたり、影が赤黒く見えたりするケースです。
グレー肌は、ベースと影がどちらも彩度不足になっている場合が多いです。
この場合は、ベース・影ともに彩度を少し上げるか、ベースに戻って塗り直すのが近道です。
赤黒い影は、影色の彩度が高過ぎるか、明度が低過ぎることが原因になっていることがよくあります。
影色の明度を少し上げるか、彩度を下げてブラウン寄りに調整するだけで落ち着いて見えます。
注意点:
デジタルでは、モニターの明るさが強過ぎると肌色が実際よりも明るく見えるため、作業前にモニターを中間の明るさにしておくと失敗が減ります。
ブラウン以外の影色との組み合わせで印象をやわらげる
ブラウン影だけでは重く感じるときは、他の色を少し混ぜることで印象をコントロールできます。
たとえば、頬や鼻先には赤寄りの影を、あごや首周りにはブラウン寄りの影を使い分ける方法があります。
目の下やほうれい線は、少し紫を混ぜると落ち着いた影になり、肌のボリュームを表現しやすくなります。
見逃せないのが:
影全体をブラウン一色で塗るのではなく、部位ごとにブラウンと他の色を混ぜることで、肌の立体感と透明感を両立しやすくなります。
ブラウンの肌影を使いこなすための練習メニュー

最後に、ブラウン影を安定して使えるようになるための練習方法を紹介します。
一度に全部こなす必要はないので、できそうなものから試してみてください。
3色だけで肌色と影を作るクロッキー練習
まずおすすめなのが、「赤・黄・ブラウン」の3色だけで肌と影を塗るクロッキー練習です。
水彩なら同系統の透明水彩3色、デジタルなら似た位置の3色をパレットにセットします。
顔や手の写真を見ながら、ベース・影・ハイライトをこの3色だけで作ってみると、それぞれがどんな役割をしているかがつかみやすくなります。
実践ポイント:
色数を絞ると失敗の原因もはっきり見えやすくなるので、ブラウン影の使い方を体で覚える感じでクロッキーしてみると効果的です。
写真トレースでブラウン影の位置と色味を観察する
写真の上から、半透明レイヤーやトレーシングペーパーを使って影だけをなぞる練習も有効です。
写真をグレースケールにして明暗だけを確認し、その上に自分でブラウン影を描き足していきます。
このとき「どこが一番濃い影か」「どの辺から急に明るくなるか」といった境界を意識して見ると、影の置き方の癖がつきます。
1分で要点:
写真トレースは、ブラウンの色そのものだけでなく「どの位置にどれくらいの濃さが必要か」を学ぶ練習として使うのがコツです。
自分専用の肌色パレット・スウォッチを作る
最後に、普段よく使う肌色をまとめたパレットやスウォッチを作っておくと、毎回の色選びがぐっと楽になります。
水彩・アクリルの場合は、紙にベース・ブラウン影・ハイライトの3色をセットで塗り、「色白」「標準」「褐色」などのラベルを書いておきます。
デジタルでは、パレットウィンドウに肌色用のセットを作り、レイヤー名やメモでどのキャラクターの肌色かを記録しておきます。
【肌色パレット・スウォッチ作成のチェックリスト】
| チェック項目 | 水彩・アクリルでのポイント | デジタルでのポイント |
|---|---|---|
| ベース・影・ハイライトは揃っているか | 3色をセットで紙に塗りラベルを書く | 3色を並べてパレットに登録する |
| 肌タイプごとの差がわかるか | 色白・標準・褐色などの順に並べる | レイヤー名やメモで肌タイプを記録する |
| ブラウン影の色味を記録したか | どのブラウンをどれくらい混ぜたかメモする | HSBやRGBの値を簡単にメモしておく |
| 紙やモニターの違いを意識しているか | よく使う紙ごとにスウォッチを作る | よく使うモニター設定でスウォッチを作る |
(出典:サクラクレパス)
※本内容は執筆時点。最新情報は公式サイト確認。
迷ったらここ:
まずは「よく描くキャラクター3人分の肌色セット」をスウォッチにしておくだけでも、毎回の肌色づくりがぐっと楽になります。
ここまでの練習を通して、ブラウンそのものの性質も気になってきたら、親テーマである茶色の混色レシピも合わせて確認してみると理解が深まりやすいです。

まとめ
ここまで、水彩・アクリル・デジタルそれぞれの肌色の作り方と、ブラウンの影の使い方を整理してきました。
肌色を安定させるには、まず「ベース・ブラウン影・ハイライト」という3つの役割を分けて考えることが大切になります。
水彩やアクリルでは、赤+黄+少量のブラウンをベースにし、水や白で明るさを調整しながら薄く重ねていくと、くすみにくい肌色になります。
デジタルでは、黄〜オレンジ寄りの低〜中彩度のベースを用意し、ブラウン影は色相を少しだけずらしつつ、明度差と彩度差で立体感を調整していくイメージです。
ブラウン影が強過ぎてしまったときや、肌がグレーに感じるときは、「暗さ」「彩度」「色相」のどこが行き過ぎているかを確認し、小さく戻す癖を付けておくとリカバリーが早くなります。
最後にもう一度、ポイントを整理しておきます。
- 肌色は1色ではなく「ベース+影+ハイライト」の3色セットで設計する。
- ベースは黄寄りで落ち着いた彩度、影は同系統のブラウンで色相を少しずらす。
- 水彩やアクリルは「薄く重ねる」、デジタルは「数値とレイヤーモード」で調整していく。
- トラブルが起きたら、原因別の対処法で小さく戻す意識を持つ。
- 自分専用の肌色パレットやスウォッチを作っておくと、キャラクターごとの肌色が安定しやすい。
まずは、自分が一番よく描くキャラクター1人分の「ベース・ブラウン影・ハイライト」を決めて、スウォッチを作るところから始めてみてください。
それができれば、他のキャラクターにも応用しやすくなり、肌色づくりがぐっとラクになっていきます。
よくある質問(FAQ)
Q. 水彩の既製の「肌色」チューブだけで塗っても大丈夫ですか。
A. 既製の肌色だけでも塗ることはできます。
ただし毎回同じ印象になりやすいので、赤や黄、ブラウンを少し混ぜて自分の絵柄に合うニュアンスを作ると表現の幅が広がります。
Q. デジタルで肌の影に真っ黒やグレーを使うのはNGですか。
A. 完全な黒やグレーだけで影を作るのは避けた方が安心です。
少しでも赤みや黄みを含んだブラウン寄りの色にしておくと、血色を保ったまま自然な影になりやすいです。
Q. ブラウン以外の影色(紫・青など)でもきれいな肌になりますか。
A. 紫や青を影色に混ぜるのも有効な方法です。
その場合はベースを少し暖かめの肌色にしておくと、冷たい影色とのバランスが取れて、肌が死んだように見えにくくなります。
Q. 毎回同じ肌色にならず、キャラクターごとに色がブレてしまいます。
A. キャラクターごとに「ベース・影・ハイライトの3色」をスウォッチで保存するのがおすすめです。
水彩なら紙に、デジタルならパレットにセットを作っておくと、そのキャラクターの肌色がぶれにくくなります。
Q. モニターや紙によって肌色の見え方が変わるのが気になります。
A. 環境ごとの「基準」を決めておくと安定します。
デジタルではモニターの明るさを中間に固定し、水彩やアクリルではよく使う紙ごとに肌色スウォッチを作って比較すると、違いを把握しやすくなります。
Q. 初心者は水彩・アクリル・デジタルのどれから肌色を練習するのがおすすめですか。
A. 手早く試せるデジタルから入る方法が扱いやすいです。
そこで色の関係に慣れてから、水彩やアクリルでブラウンの混ざり方やにじみ方を体感すると、両方の良さを取り入れやすくなります。
参考文献・出典
- サクラクレパス「水彩絵の具の使い方(教職員の皆さまへ)」
- 水彩画ぬり絵の描き方講座「肌色の作り方」
- CLIP STUDIO TIPS「肌の塗り方」特集
- ATAM ACADEMY「透明感のある肌の塗り方講座」
- ART street by MediBang「顔・肌の塗り方講座」
- ターナー色彩「アクリルガッシュ 製品情報」




